永遠の絆
「おい、待てって言ってんだろ」
「……」
素早くあたしの腕を掴んできた翔の手が温かかった。だから、またその所為で目が潤み始めた。
泣いちゃダメって思ってんだけど、あたしの目は意地悪で涙腺が弱くなってく。
「逃げんなよ」
翔がそう言った後、少し手の力が強まった気がした。
逃げてる訳じゃない。ただ、何かを言われるのが怖いだけ。
二人で居ると喜びは倍になって悲しみは半分ってよく言うけど、そんなのありえっこない。
何かを求めても叶わない事だっていっぱいある。だからあたしは思う。
二人で居ると哀しく辛い事だってある。乗りきれない事だってある。
今のあたしはきっとそれ。
「なぁ、俺の事、避けんなよ。ちょっと話ししてーんだけどいいか?」
“中入ろ”
そう付け加えられた言葉が何だかあたしにはしっくり来なかった。
掴まれていた腕を離され、あたしの背後から翔の歩く足音が微かに響く。行くか行かないかなんて考えるより先にこれ以上、翔を避ける訳にはいかないと思った。
でも、だからと言って一緒に居たいなんて思えなかった。
かなりの矛盾さに頭が痛くなる。
「なぁ、来いよ」
立ち止まって数分。翔のため息交じりの声があたしの耳に届く。まるで、何でこねぇんだよって感じの呟きみたいだ。