永遠の絆

戸惑いの壁


眠りについて目を覚ますと、そこには翔の姿はなかった。

リビングを見渡しても翔の姿はなく、テーブルの上にはパンとカフェオレが置かれてる。


時刻は午前11時。

当たり前に学校は始まっていて、もう行く気すらしないあたしは、とりあえずベランダに出て深呼吸をする。

街が透き通るくらいに真っ直ぐ見えて、それがあたしの心を落ち着かせてくれるような気がした。


暫く景色を眺めていると、遠くの方から秘かに聞こえてくる小さな音に、あたしは視線を向けた。

足を進めて行く方向はあたしの鞄。


全開に開いている鞄の中からイルミネーションに光る携帯が目についた。


鳴り続ける振動音にあたしは携帯を手にする。ディスプレイに“翔”と刻まれた文字に、あたしは一息吐き通話ボタンを押す。


「…はい」

「おはよ」


優しく爽やかな翔の声が耳に届く。


「うん。おはよ」

「起きてた?」

「うん」

「みいちゃん、まだ居る?」

「うん」

「ごめん。また居なくて」


電話口から洩れてくる小さな申し訳ないような翔の声。


きっと仕事…だと思う。





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