永遠の絆

「ごめん…ありがと」


手に持っていたジャケットをもう一度羽織ると、一気に温もりを感じた。

翔の跡を歩いて止まった場所は、いつもと変わらない石段の階段。そこに翔が腰を下ろすと、あたしも同じく石段に腰を下ろした。


少し寒い風に波が押し寄せる。


ここに来ると落ち着くって言ってた翔の気持ちが凄く分かる。海を見てれば、きっと…何時間も居れそうって、そう思った。


「やっぱここに来っと落ち着くよな。…安心するっつーか」

「うん…」

「俺さ、なんつーか…深入りとかあんましたくねぇんだけどさ、でもみぃちゃんと居て思う事とか考える事とか結構あってさ…」


あたしの思う事、考える事…って何?

真剣そうな表情でそう言った翔は両手をポケットに突っ込んだまま遠くの海をずっと見つめてた。


「…あたしの事とかって何?」


翔を見たまま問い掛けると翔は軽く一息吐いて俯く。


「うん…まぁ手っ取り早く言うと…」


そう言いながらポケットから出して「はい」って渡された“それ”にあたしの視線が止まる。

そこから動く事が出来なかった。

今、起こっている出来事に着いて行く事さえも出来ず、あたしはただただそこに視線を落としてた。


「はい」


もう一度そう言ってあたしの膝に置かれたのは、ちょっと前に諒ちゃんが持ってた物。

いらないって返したママの通帳。


「…意味分かんない。何で翔が持ってんの?」


膝に置かれた通帳から翔に目線を送ると、翔はあたしを見た後、視線を前に向けた。










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