永遠の絆
「…つか、寒い。帰ろ?」
「うん…」
そっと離れた身体が冷たい風に覆われる。
翔は立ち上がると同時にあたしの手を掴み引き上げる。俯くあたしは必死で涙を抑え込み一息吐く。
繋がれた手と反対の手に握りしめている通帳が自棄にあたしの気持ちを左右させる。
どうしよっか、この通帳。
倍になっていた金額があまりにも申し訳なく感じ、頭の中で返す理由を考えてた。でも、きっと翔は“返さなくていい”って言うに決まってる。
今までだってそうだった。お金を持ってる翔にとっては、たかが500万なのかもしれない。でも、あたしにとったらそのたかが500万が大金だ。
昔っからそう。借りるのは嫌い。貰うのも嫌い。
そう思うのはいつからだろう。小さい時からママが必死で働いている姿を見てきたからだと思う。苦労して稼いだお金をそう簡単には貰えないってずっと思ってきたからだと思う。
でもあたしが貯めてる金額じゃ、当たり前に留学なんて出来ない。学費で精一杯にすぎない。別に留学は今じゃなくてもいいんだけど…
「どした?」
車に乗ってすぐ翔の声で我に返る。
ハッとしたあたしは翔に視線を送ると、翔は首を傾げてあたしを見つめる。
「あ、いや…」
小さく呟きギュッと握りしめる通帳が変形しそうなくらいあたしは握りしめた。