永遠の絆

「そんな事ない。あたし…翔に助けてもらってばっか。借りだっていっぱいあるし」

「借り？」

「うん」

「つか、何もねぇじゃん。俺、作らせた覚えもねぇし」

「じゃあ、それでいいよ」

「は？意味わかんね」


呟いた翔の身体を少し引き離し、あたしは薄ら微笑んで翔を見上げる。

敢えて詳しく言うと翔はきっと“何もしてない”とか“気にするな”とか言うに違いない。


だからあたしはそれ以上、何も口にはしなかった。

見下ろされて見つめられるその端正な顔に思わず視線を下げる。


「みぃちゃん？」

「うん？」


下げてすぐの瞳をもう一度上にあげると翔は口角を上げた。


「キスしてい？」


ドキドキさせるその言葉にあたしは頬を緩める事なく、


「やだよ」


小さく呟いた。


「は？やだよ。とか言うなよ。そんな事俺に言うのみぃちゃんしか居ねぇわ」

「それって他にも言ってるって事？」

「今まで言ったことない。今初めて。だから普通に傷ついた」

「ごめん。今から学校」

「さらっと拒否んなよ」


顔を顰めた翔はあたしから離れソファーに腰を下ろし、あたしは苦笑いを漏らした。

だって、そんな事しちゃうときっと多分、のめりこんでしまって学校どころじゃなくなってしまう。


「あ、そうだ。ママ退院したらあたしも家に戻ろうと思う。心配なんだ…」


つい話を逸らして思い出した事を口にすると翔はあたしを見て微笑んだ。


「うん。そうしな」

「うん」

「あ、でもここにも来いよ」

「もちろん来るよ」

「どうだかね。みぃちゃん来ないってなったら本当に来ねぇから」


苦笑いで口を開く翔に思わずあたしまで苦笑いになる。


「これからは来るから。翔の事も心配だから」

「そう？ありがと」

「もう行くね」


ソファーにあるスクール鞄を肩に掛けたあたしに、


「じゃあ送る」


いつもそう言ってくるその優しさにあたしは今まで頼り過ぎてた。


だから段々と日に日に過ぎて行き、翔と居る事が当たり前だと思い込み自分の事が全く前にに進んでなかった。

でも、それを改めて気づけさせたのは年が明けてすぐの事だった。