永遠の絆
家のまん前まではよくない。
ましてや、こんな車だ。
葵の親は本当に厳しくって、いちいち男の事になると煩いって葵が言っていた事も少なくはない。
まぁ、それほど葵の事を大切にしていると言う事は、あたしにとれば少し羨ましい事でもある。
鞄の中に入っている携帯を取り出し、あたしは葵に電話をする。
コール3回目で途切れた後、
「…はい」
今にも消えそうな小さな声が電話口から聞こえた。
「葵?」
「…うん」
「今、葵の家の近くに居るんだけど出て来れるかな?」
「えっ、あ…、うん」
葵が小さく戸惑った返事をした後、あたしは携帯を鞄の中に押し込んだ。
車のデジタル時計は20:35を示していて、翔は何も言わずにただ、前を見ていて深くシートに背を付けている。