封印せし記憶
帰宅
クリーム色の外壁、2階建てアパート。
そこは静菜が高校に上がってから、暮らし始めた場所だった。
近くには小高い丘のある公園がありその丘の上には1本だけ木が植えてある。
その木は春になると満開の桜の花が見れるのだ。
駅までは徒歩15分。買い物をする場所や病院も徒歩で20分圏内に一通り揃っている。
不便ではなかった。
なにより学園へは徒歩30分。
遠いではないかと思うかもしれないが、静菜にしてみれば朝の電車に乗る必要がない為、かなり気に入っていた。
静菜はあの少年と別れてから1時間も経過しないうちに、その場所へと帰ってきていた。
別れたといっても少年は静菜を今にも殴り飛ばすのではないかと思うほどの殺気で睨みつけ、すぐに静菜を振り切るような速さで歩き出しどこかに行ってしまったのだ。
静菜が興味を示した少年の名前は、結局知る事は出来なかった。
しかしまたすぐに会える。
そんな確信めいたものが静菜にはあった。
同じ学園に通っているということが、そんな想いを抱かせたのかもしれない。
これほどまでに静菜が誰かに興味を抱き、また会いたいと思ったのは初めてだろう。