封印せし記憶


相変わらずふわふわとした微笑みを浮かべながら、ベッドを背にして腰を下ろしていた静菜。
そこが静菜のいつもの定位置だ。

6畳洋間のその部屋。
静菜が身体を預けているベッドに目の前には小さな丸いテーブル。
夜が過ごしやすくなってきた近頃では使わなくなっているが、静菜がそこに座ると風が当たるように置かれた扇風機。

それ以外にこれといった家具はない。
殺風景。
そう表現して間違いのない部屋が静菜の生活空間だった。


静菜は30分もそこにそうして座っていたかと思うと、すっと立ち上がって玄関脇にあるキッチンに立った。

料理をしようとしたわけじゃない。

ただお湯を沸かしてお茶を入れただけ。
もう既に20時になろうというのに、夕食をとる気配がない。
静菜は1人暮らしするようになってからというもの、夕食をとる時間はまちまち。
それどころか夕食をとらずに1日が終わることもある。


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