封印せし記憶
独白
時は遡り、静菜の高校入学式前夜。
いつもより少しだけ早くベッドに入った朝日奈康太。
しかしなぜか目が冴えていた。
寝室の外からは静菜を呼ぶ女性の声。
おそらく康太の妻だろう。
妻の声を耳にした康太はここ数ヶ月の静菜のことについて思いを廻らせた。
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静菜の担任が家まで来た時は驚いた。
その口から出てきた言葉は、あの進学校、栄翠学園を受験してみないかという突飛もない話だったからな。
オレは静菜の成績を知らないし知る必要もないと思っていた。
それにどう見ても成績がいいとは思えなかった。
だから最初はなんの冗談かと思ったが、あの教師は始終、真剣に栄翠学園を進めてきやがった。
静菜に言っても真剣に取り合ってもらえない。
だから保護者であるオレに静菜を説得してほしいと言われた。
とは言ってもどうせあの中学の中でそれなりに良い成績ということだろう。
どうせ栄翠には受かるはずがない。
そう思いはしたが、あの教師の熱心な進めを無下にもできず栄翠を受けさせた。
絶対に受かるはずがないと高を括って。
しかしあいつはあっさりと合格通知を持って帰ってきやがったんだ。
しかも学費免除というおまけつきで。