封印せし記憶
だが学費免除と言ってもその他諸々の経費やここから通わせるわけにもいかない事を考えると、娘が通った公立の高校の方が後々いいのでは?
そう考えたが受かってしまったものを今さらそれを蹴りでもしたら、周りから何を言われるか。
しかし栄翠にそのまま進学させれば、あんな弟達の娘(オレにとっては赤の他人も同然の娘)をなんの問題もなく育てた上に、進学校に受かるほどの教育を受けさせていたんだと評判も上がる。
娘よりもいい高校に行くのは癪に障るが…そこは大目に見るしかない。
そう思って栄翠に行くことを許可したんだ。
これから3年間の生活費を考えるとばかにならない気もするが仕方がない。
しかしあれが一番驚いたかもしれない。
静菜に入学式の新入生代表を務めてほしいと電話がかかってきた事だ。
あの時は驚きすぎて、はぁなんて間抜けな返事しかできないまま、静菜に電話を代わってしまった。
その後しばらくは放心状態で、気付いた時には電話はとっくに終わっていた。
ちらちらと静菜を盗み見たがいつもと変わらない薄ら笑いを浮かべていて、何を考えているのか全くわからない。
さっきの事は本当にあったことか?
だとしたら静菜はちゃんと受け答えできたのか。
聞こうかとも思ったが、恐ろしくて聞けなかった。