封印せし記憶


静菜は少年に駆け寄り服の裾を掴んでクイっと引っ張った。

「…っ!おまえ、なんで…!」
「知ってる?今は学校にいる時間なのよ」

ふわふわと笑って少年に告げる静菜。

「っ!おまえに関係ないだろ!だいたいおまえが言えんのかよ!」
「ねぇ、あなたお名前は?」

昨日と同じように同じ質問を繰り返した静菜に少年の顔は歪んだ。

「私はね…」
「あっ~!もういいっ!」

また名乗るのではないかと思った少年は静菜の言葉を遮った。

「なんなんだよ。おまえはっ」
「あなたは勉強が嫌い?」
「はぁっ?今そんな話してねぇだろうがっ」

関係のない話をされて苛立ちを覚えた少年は裾を掴んだままの静菜の手を払い除けた。

「私はね、これから家に帰るところなの」
「だからっ!!…もういい。帰るんならとっとと帰れよ」

さらに話が変わってしまったことに虚を衝かれた少年に静菜はフワリと微笑んだ。
少年はなぜここで笑うのかと訝しみ、静菜を凝視する。

「あなたも一緒に帰る?」
「…はぁ?」

そして静菜の言葉に完全に毒気を抜かれたようになってしまった少年の表情には困惑だけがそこに残っていた。


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