封印せし記憶
それが当然のように答えた静菜に、初めてちゃんとした返答が返ってきたなと、軽く考える和弥。
しかし静菜の担任やクラスメイト達がこれを聞いていたなら、どれだけ驚いたことだろう。
静菜に質問をして、その質問の答えが返ってくるなど、何万分の一の確立…は大袈裟だが、それくらいの驚きがあるということだ。
勝手にしたらいい。
口には出さずに心の中だけでそう言いい、立ち上がろうとする和弥。
しかしそれは静菜によって阻まれた。
和弥の服の裾を掴んで引っ張ったのだ。
しかもその力は以外に強かった。
予期しない力に抵抗できずそのまま尻餅をつくように腰を下ろす和弥。
「いっ…!!……ってぇぇっ!!…おいっ!何すんだっ!!」
強く打ったお尻を押さえ、その痛みの原因である静菜を睨みつける。
「明日は雨が降るね」
「はぁっ!?」
そんな事を聞いてんじゃねぇっ!!
と怒鳴りそうになった和弥に向かってニコリと笑う静菜。
その笑顔にまたしても毒気を抜かれたようだ。
「……天気予報でも見たのかよ」
「和弥は授業に行かないの?」
ヒクリと顔が引きつるのを感じた和弥。
授業が始まる数分前であるにも関わらず、未だに和弥がここに座っているのは静菜のせいであるはずなのに、それがわかっていないかのような問い。
勢いよく立ち上がった和弥は怒り心頭といった感じで、地面を踏み鳴らしその場を去って行った。