封印せし記憶
秋雨
「……降った」
廊下の窓から空を見上げて呆然と呟く和弥。
昨日、静菜が言った通り雨がしとしとと降り始めたのだ。
朝は晴れていた。
けれど、徐々に雲が空を覆いつくした。
大粒の雨ではない秋の雨が静かに降り出したのは正午近くだった。
薄暗くなった教室と廊下には灯りが点された。
今日の降水確率はどれくらいだったろうかと和弥は考えた。
確か30か40。
そんなバカな。いや…偶然に決まっている。
そう結論付け、校門を見下ろした時だった。
校門に向かって歩く女生徒が1人。
しかも傘を差していない。
和弥はその後姿を黙って見つめる。
今にも小躍りしそうな足取りの女生徒は明らかに静菜だ。
それをわかっていて和弥は見つめていた。
自分には関係ない。
そう言い聞かせて。