封印せし記憶
衝撃
数十分後、2人は静菜のアパートの部屋の前にいた。
鍵を開けて中に入っていく静菜。
その後を追って玄関に立った和弥は所在をなくしたように立ち尽くした。
眼前には玄関に立つだけで中が見渡せるほどの小さな部屋。
そして殺風景なそれはどう見ても誰かと暮らしているようには見えない。
静菜は立ち尽くす和弥の腕を引いて丸いテーブルの前に座らせた。
ずっと雨に濡れていた静菜よりはましだが、和弥も少なからず濡れていた。
そんな和弥にタオル差し出す静菜。
「…1人で暮らしてんのか?」
あまりに殺風景な部屋に驚きながら問いかけた。
ふわっと微笑む静菜。
それを肯定だと受け取る和弥。
「家、遠いのか?」
栄翠は家が遠くて1人暮らしをする生徒が4分の1近くいるらしいことを知っていた和弥はそんな質問をした。
そんな人達の為に寮を建てようかという話もあるらしいが、今は関係のない話題だろう。
「ねぇ、寒い?温かいお茶入れるね」
「…いや、俺はもう帰る」
和弥はたて続けに質問した自分を恥ずかしく思っていた。
これではまるで和弥が静菜を知りたいみたいだと。
立ち上がり、静菜を見下ろした和弥の顔に驚愕が走った。
「…っ!…お、い…なんで…」