封印せし記憶
和弥は静菜がいるはずの教室を目指した。
会ってなにがしたいのかなんてわからない。
けれど、すっきりしないまま毎日が過ぎていくのはごめんだと判断したのだ。
力任せに開けたそのドアの一直線上に目的の人物はいた。
頬杖をついて窓の外を見ている静菜の姿が探すまでもなく和弥の目に飛び込んできた。
和弥が開けたドアの音に驚き教室中の生徒の視線が集中したというのに、静菜はまるで聞こえていないかのように、無関心だった。
ずかずかと教室内に立ち入り、静菜が座っている場所にものの数秒で辿り着くと、静菜を見下ろした。
「おいっ!」
頭上から降ってくる苛立った声にゆるりと振り向いた静菜はいつにもまして掴みどころのない微笑みを浮かべていた。
「っ!来いよっ!」
静菜の腕を掴んだ和弥は引き摺るように教室から連れ出した。
完全に注目の的となり、見ていない生徒などいはしなかったが、首を突っ込もうとする者はいないようだった。