封印せし記憶
「その子が朝日奈静菜なの!?」
和弥はそのヒステリック気味の声には耳を貸さず、静菜を見つめていた。
「和弥のお友達?」
首を傾げて訊ねる静菜。
「あ?あぁ~あいつはそうだ。大橋修史っての」
そう答えた和弥は既に平静を取り戻していた。
そうなの、と納得するように頷く静菜。
けれど静菜は修史にも涼子にも興味を抱くことなく、ただ微笑んでいるだけだ。
和弥はそんな静菜に何を思うでもなく、掴まれた袖をそのままに歩き出した。
その光景を呆然と見ていた涼子がわなわなと震えながら叫び出した。
「どうしてよっ!私には一度だってそんな態度とってくれたことなかったじゃない!私の名前さえ呼んでくれたことないのにっ!」
そう叫ぶ涼子の声は和弥の耳にうるさいほどに届いていたけれど、和弥が反応することはない。