封印せし記憶
怒声


「ちょっと朝日奈さんっ!!」

朝の校門前。
1人のんびりと歩いて登校してきた静菜に荒々しく声をかけたのは、涼子だった。

他校の生徒である涼子が、朝から静菜の前で腕組みをしながら仁王立ちしていることで登校中の生徒達が何事かとチラチラと盗み見ては通り過ぎて行く。

当の静菜といえば、相も変わらず飄々と涼子を見上げた。

「どうしていつも放課後いないの!?和弥とどこに行ってるのよ!?」

その怒声は激しく、怒りの最骨頂と言ってもおかしくないほどだ。

静菜は首を傾げた。
まるでどうして怒っているのとでも言うように。

「っ!?…あんたバカにしてるのっ!?だいたいどうしてあんたみたいなのが、いつも和弥の傍にいるのよ!?いい加減、和弥に付き纏うの止めてよっ!!」

涼子の怒号が響き渡ると、登校中の生徒達が一瞬ビクリと歩みを止めたかと思うと、気まずそうにそそくさと学園の中へ消えて行った。

しかし静菜は首を傾げたまま。
まるで自身に向けられた怒りだと気付いていないかのようだ。
そんな静菜の態度は火に油状態で涼子をさらにヒートアップさせる。

「ちょっと聞いてんのっ!?あんた耳あるんでしょ!?それとも頭、おかしいのっ!?」

そこでいったん言葉を切った涼子は大きく息を吸い込み、バカにするように強く言い放つ。

「私の言ってること理解できてんのかって聞いてんのよっ!!」


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