封印せし記憶
「っ!?都合よくなんて…私は和弥の痛みがわかるよ?だから…」
「おまえにわかったような顔されるのは不愉快以外のなんでもねぇ」
和弥は涼子の言葉を最後まで聞くことなく、その言葉に嫌悪を乗せて口にする。
「どうしてよっ!和弥だって親に見放されてるんでしょ!?辛いでしょ!?苦しいでしょ!?ねぇ、和弥っ!!」
しかし涼子はどうしても納得できずに、ただ自分勝手に喚き散らした。
和弥の顔からどんどん感情が抜け落ちていくことさえ気付かずに。
「三条っ!!もういいだろう!!」
突如、修史が涼子を怒鳴りつける声が響き渡る。
「大、橋…くん」
修史が怒鳴ったところを始めて見た涼子は驚き、激情がからんと音をたてて地面に叩きつけられたような気がしたのだった。
「もうやめとけよ。それ以上は三条も和弥も辛いだけだ。三条。おまえは和弥にどうしてほしいんだ?俺達は同じなんだって傷を舐め合うのか?それっていつまで経っても傷は癒えないよ。傷を抉り続けるだけだ」
切なそうに。
悲しみを帯びたその瞳は、涼子への同情か。それとも蔑みか。
「そんなこと…」
ない…。
そう紡ぎたくても、そう出来ない自分がいることを涼子は感じた。