封印せし記憶
静寂
授業開始のチャイムはとうに鳴っていて、学園全体が静けさを帯びていた。
授業中の学校とは異様なもので、何百という数の人間が勉強をする為に集まっていて、たくさんの気配はあるが騒がしさはない。
真面目に授業をうける生徒たちの空気を校舎全体が纏っているのだ。
そんな中で異質と言えなくもない2人が、涼子と修史が去った裏庭で、ただ黙ってそこにいた。
チラリと和弥が静菜を見やれば、静菜はいつもの微笑を浮かべて校舎の壁に背を預けていた。
そして空を見上げている。
何を考えているのか、静菜の表情からは当然のように窺い知ることは出来ない。
「……あの女に何を言われた」
低く響くその声はまるで怒っているかのようにも聞こえる。
「…今日は生物の授業があるから楽しみなの」
4限目なんだけどねと心底楽しそうに付け加えた静菜。
「そんな話はどうでもいい。俺の質問に答えろ」
きつく静菜を睨みつける和弥。
今回に限っては話が反れることを良しとしないと伝えるように。
静菜は和弥のそんな雰囲気を感じとりながらも、ふわふわと微笑み口を開かない。