封印せし記憶
しかし静菜も少年もゴミと称したそれは、ゴミではなかった。
そこに転がっているのは、間違いようもないほどに人の身体であった。
しかも数名が呻きながら道端に転がっている。
見るに彼らは喧嘩をした直後というところか。
ある者は腹を押さえ、ある者は壁に凭れ口許には僅かに血が。
そして静菜が躓いた者はいったい何をされたのか。
顔を覆いながら、ふーふーと荒く息を吐いている。
が、静菜には全くと言っていいほどに興味のない事だった。
その代わり静菜は、悪態を吐いている少年に興味を抱いたようだ。
なぜかその瞳には僅かな興味の色が浮かんでいる。
いつまでも自分を見上げている静菜にさらに苛々が増した少年は、もう構っていられないとでも言うように歩き出した。
しかしなぜかそれについて行く静菜。
そして真横に並んだかと思うと、少年の服の裾を掴んでクイッと引っ張った。