封印せし記憶


喫茶店までの道のりを無言で歩いた2人。


カランと、音を立てた扉を潜り抜け、2人掛けのテーブルに案内される静菜と修史。

客は数名。
カウンターに2人とテーブルには2組。

ゆったりと落ち着いた雰囲気を醸し出すのは、顎鬚を蓄えたオーナーがそうさせるのか、それとも音量を絞りに絞った音楽のせいか。
うるさすぎないその音楽はジャズだろうか。耳に心地良く流れ込む。

高校が近くにあるにも関わらず、この空間はそれをまったく感じさせない。
非常識な高校生がこの喫茶店を利用しないのは、静菜と修史を案内した店員がいるからだとか、そうでないとか。

まぁ真相はどうあれこの喫茶店はいつでも落ち着いた雰囲気を味わえる場所として地元の人達に活用されている。


「ご注文はお決まりですか」

柔らかな男性の声に、修史が顔を上げた。

「朝日奈さんは何を?」
「ダージリン」
「…じゃあ、俺はモカで」

以上でと告げた修史は、注文を繰り返した男性がカウンター内に戻っていくのを目で追っていた。


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