封印せし記憶
記憶


一方、自宅へと帰宅していた和弥は…
着替えもせずにリビングのソファにごろりと寝転んでいた。

そして真っ白な天井をぼんやりと眺めながら昔を思い出していた…
まだ、和弥の家族が家にいた頃を。


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いつだったか、親父が出張の土産だと言って、ビードロを買って帰ってきたことがあった。
笑ってありがとうと言って受け取ったお袋は、嬉しそうに鳴らしてみせたんだ。

『母さんオレにもやらせて』

俺もそれを鳴らしてみたくて、お袋にねだった。

『いいわよ。だけどあまり強く吹きすぎないでね』
『わかった』

手渡されたガラス細工は子供の俺でも、脆そうだと感じたような気がする。
ふぅ、と恐る恐る吹きかけた。
けど、ビードロから音は出なかった。弱すぎたんだ。
何度か繰り返したが鳴らないそれに、子供の俺は苛立ち始め、最後にはおもいっきり息を吹きかけてしまったんだ。

ビードロはいとも簡単に粉々に砕け散った。

『ごめんなさい』

強く吹くなと注意を受けていたのに、それを守らなかったおれは素直に謝った。
そんな俺を親父もお袋も笑って許してくれた。
兄貴はバカだなぁと俺の頭を小突いて、でもその後は一緒に笑っていた。

数少ない、幸せの一場面。



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