封印せし記憶
「あぁっ?なんか用かよ」
「あなた、お名前は?」
まるで迷子の小さな子供に問いかけるような言い方。
「あぁっ!?」
その言い方に苛立ちの頂点に達した少年は静菜に勢いよく振り返った。
「ん…私はね、朝日奈静菜って言うのよ」
それは怒っている相手にではなく、ぐずっている子供に言い聞かせるようだった。
「っ!おいっ!俺はおまえの名前なんか聞いてねぇんだよっ!」
「…あなた、同じ学校の人よね?同じ学校の制服だもの」
「んなこと、おまえには関係ねぇだろうがっ!手ぇ放せよっ!」
裾を掴んだままだった静菜の手を振り払う少年。
「どうしたの?」
不思議そうに問いかける静菜に少年の顔がピシッと凍りつく。
「…どうしたの、だ?…あぁっ、くそっ!とにかく俺は行くっ!」