封印せし記憶


「おいっ、放せっ。いい加減にしねぇとぶっ飛ばすぞ」

少年の方へと傾きかけた静菜の身体を支えて、和弥がすごむ。

「…ちょっとだけだって。いいだろ?俺が楽しいこと教えてあげるからさ」

なおも静菜を強く引き寄せた少年は、目を細めて厭らしく囁きかけた。


「っ…やぁっ……!」

抵抗を示した静菜の声は、あまりにも弱々しく儚いものだった。
途端にがくがくと震えだし地面にくず折れる静菜。

少年に掴まれた腕だけが頭上に掲げられるような形になった。

「ぃゃ、ぃゃ…」と消え入りそうな声で呟き、震える姿。
その光景に少年も和弥も目を丸くする。

異常なほどの拒絶反応。
恐怖と脅えが明らかに静菜を覆っていた。


「手ぇ放せっつっただろっ」

未だに、少年が静菜の手首を掴んだままだったことに気付いた和弥は慌てて、その手を払い退けた。

「ってぇなぁ!!なんもしてねぇだろうがっ」
「黙れっ。さっさと失せろ」

鬼のような顔で睨み付けた和弥に、少年は怯んだ。

直後、チラリと静菜を見下ろした少年は、これ以上ここにいても仕方がないと悟り、不満げに舌打ちをして帰って行った。


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