封印せし記憶
「……………和弥。どうして俺を呼んだ?」
その様子をじっと見つめながら、修史は和弥に問いかけていた。
「は?どうしてって…それより今は、朝日奈をなんとかしろよ」
今、聞くべきことなのかと、訝しく思いつつ、きつい視線を修史に送った。
「……大丈夫だよって一言、言ってあげなよ。俺が言うより効果があるんじゃない?」
和弥に振り返った修史は、和弥の視線に臆することなく、はっきりと、いたって冷静な声で告げた。
「……」
顔を顰めて黙り込んだ和弥。
以前、静菜が同じように異常な状態に陥った際、和弥は静菜をなんとか正気に戻させた。
しかし…あれは非常事態だったのだと、和弥は心の内で言い訳をした。
感情が昂っていたところに、静菜のあのような状態を突きつけられ、必死になるほかなかったのだと。
冷静な状態の今、そんな恥ずかしい事が出来るかと、和弥は苦々しく考えていた。
眉間に皺を寄せたまま固まってしまった和弥を見つめて、ふぅ…と息を吐き出した修史。