封印せし記憶
修史は、和弥を静菜の目の前に押し出した。
その瞳は、言ってやれよと、そう言っていた。
そして修史は、当惑気味の和弥を置き去りに、キッチンへと足をむけた。
修史が遠ざかる足音を耳にしながらも、静菜から目を離せずにいる和弥。
「和弥って紅茶、飲むっけ」
和弥の当惑をよそに、いつも通りの屈託のない修史。
「……あっ、あぁ?紅茶?飲まねぇよ」
まるで、思考が止まっていたかのように固まっていた和弥は、はっとして、少し不機嫌に答えた。
「だよなぁ~」
小さく呟く修史を振り返り見る和弥。
「…こー」
「俺は紅茶がいいんだけど?」
コーヒーならあると発しかけた和弥を遮った修史は、ニッコリ笑いながらも威圧的な声で告げる。
そんな修史の態度にも慣れてしまっていた和弥は、わざとらしく溜息を吐いた。
そして、諦めたように、静菜の隣にストンと腰を下ろした和弥は顔だけを静菜へと向けた。