封印せし記憶


静菜は大股で歩き出した少年を小走りで追いかけ、口を開く。

「あのね…」
「俺に触るなっ!!」

その言葉を遮って叫んだ少年は、静菜が少年に触れようとしたその手を、疾風(はやて)の如く振り払った。
その手は瞬時に赤みを帯び始めていた。
おそらくジンジンと痺れいるのではないかと思われた。

「…触られるの嫌いなの?」

しかし静菜はそれを気に留めることもなく少年に問いかけた。

「嫌いだねっ!特に女なんかに触られるのは吐き気がするっ!」

心底、気分が悪い。
顔と身体、全てでそう語るようなオーラを纏いながら、静菜に投げつけるように言う。

「…そう」

静菜は呟くように、けれど少年から目を離すことはなかった。



そしてそれは静菜との会話が奇跡的にと言ってもいいほど久々に成立した瞬間だった。


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