ベイビーベイビーベイビー
付き合い始めた頃は、真理江も祥吾の離婚を切に願っていた。
しかしヒステリックに泣き叫ぶ綾乃と対峙する度に疲れ、自身の元に訪れては子供のように泣く祥吾を見る内に、真理江は祥吾にそれ以上何か言う事をしなくなっていた。
加えて、いろいろと理由をつけては離婚を拒む綾乃の、まだ残る祥吾への強い愛情も、無視できるものではなかった。
自分への愛情を失くした人間を、法律という見えない鎖で繋ぎ止める事を望む綾乃という女性。
これ以上に虚しい事があるだろうか?
真理江がこの夫婦を客観的に見た時、何とも嘆かわしい気持ちになるのだった。