ベイビーベイビーベイビー
 

 妙子が改めて麻美の部屋を見回すと、クローゼットの中にしまってあった筈の洋服がそこら中に散らばっていた。

 本来はとても綺麗好きである麻美の部屋は、大抵の場合きちんと片付けられているから、この光景は余計に異様なものとして妙子の目に映った。


 ベッドに放られている数枚のワンピースは、今さっき麻美に試され、既に却下されたものであろう。

 妙子には、それらが選ばれなかった理由がどうにも解せなかった。



 とはいえ先程の麻美からの素っ気ない返事など、日ごろから慣れている妙子である。

 ベッドの上にある数枚の中から胸に大きくフリルのついた これまた可愛いらしい一枚を見留ると、

「あのペールピンクのワンピースなんて、可愛くていいじゃない」

と遠くから指を差し、更に麻美に勧めた。


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