ベイビーベイビーベイビー
正直に打ち明けると、麻美は今度見合いをする相手の顔さえ、既に覚えてはいなかった。
『性格が合わなかったら断ればいいし』
麻美にとって “見合い”というイベントを楽しむといった風な心持ちであったから、着ていく洋服もその為の演出に似ていた。
「よし、これにしよう!」
麻美が薄いブルーのワンピースに合わせて選んだのは、少しふんわりとした八分袖を持つ、白いジャケットであった。
こうしてようやく当日に着て行く洋服が決まった。
しかし――…
「うーん、靴は何にしようかしら?
それにバッグも色を合わせたほうがいいかしらねぇ」
広げた洋服が片付かない内に、今度は沢山の靴の箱が持ち込まれ、妙子が再び様子を見に麻美の部屋を訪れた時には、何やら身動きを取る事すら窮屈そうな空間にやっと麻美を見付けたのであった。
〜『悩めるベイビーたち』麻美〜