ベイビーベイビーベイビー
真佐子の息子はまだ到着していなかったが、三人は先に座敷へ通してもらう事にした。
麻美は数回この料亭を訪れた事があったが、いつ来ても畳の匂いが芳しいく、床の間に活けられた枝物の凛とした美しさは、今日のような日には丁度良い緊張感を与えた。
百合子と真佐子がお互いの近況を報告し合っているのを聞きながら、麻美は座敷の窓、庭園の向こうに広がるから相模の海を見ていた。
そこから見える海は、麻美の家からも見える海と同じであるとは思えないくらい、他人行儀な表情を見せていた。
麻美は麻美の鼓動が少しずつ速度を早めていくのを感じ、内心でそれに少し戸惑っていたのだった。