ベイビーベイビーベイビー
  
 麻美の表情を見る限りでは、当初に身上書を受け取った時同様に、ここでも嫌な印象は抱かなかったようである。

 麻美が実際に見る彰人は、以前百合子から渡された写真で見るより、ずっと若く見えた。

 といっても、いつも麻美が東京で遊ぶ仲間に比べれば随分と大人であるし、少しも緊張していないその落ち着いた様子を見れば自分の幼さを感じずにはいられなかったのであるが。

 
 こんな風に、今のところおとなしく黙って静観している麻美とは反対に、

「いいわよ、真佐子さん。こんなに広いお座敷ですもの。私達は気にしないわ。ね?麻美ちゃん。

 彰人さん、どうぞそちらにお掛けになって!」

 さっきまでの発言は何だったのか、百合子はいつも通りの調子をもって彰人を空いている上座の席へと促した。


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