ベイビーベイビーベイビー
結局今日もすぐ帰るつもりが、
「お茶でも飲んで行きなさい」
という言葉に甘え、藤堂は吉田の自宅に上がりこんでいた。
「すみません、またお邪魔しちゃってます」
いつもの事ながら、藤堂は座ったまま両手をひざに付け、深々と頭を下げて妙子に謝った。
そんな藤堂に、
「いいのよ、いつもお父さんの相手をありがとうね」
吉田の妻、妙子は氷を浮かべたストレートティーを差し出した。
「こんな日に箱根に出掛けたりして、道は混んでいなかった?」
妙子の気遣いに「ありがとうございます」と再び会釈をもって感謝した藤堂は、
「そうですね、芦ノ湖の辺りは混雑していたんですけど、そこさえ抜ければ大丈夫でした」
と、妙子の問いかけに答えた。
「箱根は伊豆と違って観光するところが沢山あるからな、若い子が多いよ」
藤堂が運転する車の助手席の窓から、すれ違う車にことごとく若いカップルを見た吉田は、しみじみと呟いた。