ベイビーベイビーベイビー
――と、妙子がふと思い出したように、
「そういえば今日は熱海も随分混んでいたって、さっき麻美も電話で言っていたわ。もうそろそろ駅に着く頃かしらね」
と言いながら、もうじき6時を指そうとしている時計を見上げるのが見えた。
普段の移動手段はもっぱら車である麻美であるが、慣れない熱海市内での渋滞を恐れ、今日は電車で出掛けていた。
家から駅までは2Kmほど。
日暮れになると道は薄暗く、歩くにも少し距離があることから、電車を使うときはいつも妙子が駅までを送り迎えをしている。
「へえ!麻美ちゃんが熱海に?珍しいですね!僕はてっきり東京に行っているものだと思っていました」
珍しいこともあるものだと、藤堂は心からが驚いた。
すると妙子は
「うふふ。例のアレよ、お・見・合・い!」
と、嬉しそうに笑った。