ベイビーベイビーベイビー
藤堂が駅に着くと、麻美の乗った電車は既に到着した後のようで、改札を抜けて出てくる人々の姿が運転席からも見えた。
麻美の携帯電話の番号も知らない藤堂は、麻美を見逃さぬようその小さな駅を見つめていたのであるが、しばらくすると、その田舎の駅に似つかわしくない水色のワンピースに白いジャケットを羽織った麻美の姿が見えた。
藤堂が自宅で麻美と顔を合わせる機会でも可愛らしい洋服を着ている麻美であるが、こうして外で見るとまた違って見えるものである。
「そうか、今日は見合いだったな」
と独り言を呟くと、車の窓を開け、
「麻美ちゃん!」
と名前を呼んだ。