ベイビーベイビーベイビー
訳が分からぬ問答の末、突然“子ども”扱いされた麻美は、何やら面白くなかった。
そして
「何よ、藤堂さんだって独身のくせに!」
と反論するのであるが――。
(そういうところが“子ども”なんだよ!!)
藤堂はそう思ったのであるが、今度は口には出さずにおいた。
そして、
「確かに、僕が人の事言える立場じゃないんだけどさ。
でも“恐らく”だけど、嫌な一面も受け入れる覚悟がないと、赤の他人が一緒になんて暮らせないと思うけどね。
まあ、あくまでも“恐らく”だけどね」
と、独身者の一人として、あるいは麻美よりもずっと長く生きてきた者としての意見を、まるで独り言をいうかのように呟いた。
「恐らくなの?」
麻美が藤堂に改めて聞くと、藤堂は「ふふん」と鼻をならすようにして笑った。
(そうだよ、絶対なんてこの世にはないから、自分の考えがなんてものが絶対である訳がない。
でも、だから―― )
「恐らくね」
~『交差するベイビーたち』 藤堂~