ベイビーベイビーベイビー
麻美は窓辺に座り 充実していた東京での生活を思い出しながら、海の向こうに見える灯りを見つめていた。
「早くこんな町から出ようっと」
――とは言うものの、親にも百合子にも心配をかけず、加えて親の縁故で決めた仕事を辞めてここから離れるには、嫁入り先でも決めるしかないと分かっていた。
今年25歳になる麻美だ。決して早過ぎる事はない。
しかし友人の多い麻美ではあったが、残念ながら恋人はいなかった。
麻美は友人を訪ねると言っては東京に出掛け、イベントやら飲み会やらに 積極的に参加した。
そして、
もう一度東京で暮らしたい――。
都会の空気に触れる度に、麻美は益々そんな事を思うのだった。
麻美の机の上をみれば、百合子から届いた一通の手紙が置かれていた。
〜『べイビーな人々』 麻美〜