ベイビーベイビーベイビー

 家に閉じ籠っていたこの数日間、自分の住まう部屋をピカピカに磨きあげた真理江は、もうこれ以上することを思い付かなかった。


 楽しい事を探すかのように階下に降り、何日かぶりにポストを開くものの、相変らずその内身はDMばかりであった。

 いつもそのままシュレッダーにかけてしまう真理江であったが、しかし今日に限ってはその一枚一枚を丁寧に目を通した。


 その殆んどはデパートからで、洋服やら化粧品やらの店が、早くも夏物の入荷を知らせていた。


「夏…か……」

 そう呟くものの、まだピンと来ないのが実際ではあるが、

「ちょっと出掛けようかな」

とはいえそこにある明るい写真たちは、真理江を戸外へと誘うのだった。


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