ベイビーベイビーベイビー
目的も持たずに訪れた久しぶりの街。
そこに建ち並ぶ新しいビルの中に、真理江は学生の頃よく利用していた老舗の書店を見付けた。
8階建てのこの書店は若い真理江を飽きさせる事を知らず、時間をもて余していたあの頃は、そこで数時間を過ごすこともあった。
久し振りにその入口に立ち、しばらく迷っていた真理江であったが、何か思い立ったように書店の中へと入っていった。
そして真理江は店内の案内図を見ると、迷わず旅行ガイドの置かれたフロアへと進んだ。
朝 ふと頭をよぎった“旅行”が心に残っていたのだろうか、それとも“何処かへ行きたいと”いう気持ちがそうさせているのだろうか。
真理江の足取りはとても軽かった。