ベイビーベイビーベイビー
 

 綾乃は祥吾を取り囲む者の中へと加わった。

 祥吾のこんな穏やかで優しい顔を見るのは、何年ぶりであろうか?


 ああ、そうだ。

 大学時代に知り合って、初めて二人で食事に行ったとき、祥吾はいつもこんな顔をしていた。

 就職が決まった時も、祥吾はこんな顔で嬉しそうに自分に報告をしてくれていたっけ。

 ああ、そうだ。

 「結婚しよう」と告げられ、嬉しくて思わず泣いてしまったときも、結婚式のその当日も、新婚旅行の最中も、一緒にマンションで生活を始めてからも……

 祥吾はいつだって優しく微笑んでくれていたではないか?


 私はあの時、確かに祥吾に愛されていた――……


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