ベイビーベイビーベイビー
 
  ダイニングから、

「麻美ちゃん、おいしく焼けたわよ」

と、百合子が麻美に声を掛けた。


 ロッキン・チェアーを揺らしてしかめっ面をしていた麻美を、焼き立てのスコーンとバターの芳しい香りがダイニングへと誘う。

 麻美は庭先に咲いていた百合子の気に入りの薔薇、ピンク色のティファニーを1つ摘むと、百合子がダイニングに用意した、湯を注がれリーフを揺らしているガラス製のティーポットの中に、その花びらを浮かべた。


 それを見た百合子は、

「まるでローズティーね」

と嬉しそうに微笑んだ。


 麻美はこの風景がたまらなく好きなのだと、改めて思った。






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