ベイビーベイビーベイビー
そうこうしている間にも日は沈み行き、次第に辺りは薄暗くなってきた。
夕日を反射させていた海も、黒みを増していく。
それでも恋人たちは同じように語らい続けているのであるが、
「そろそろ行きましょうか?
冷えて来ましたしね」
と言うと、中瀬は再び真理江を先導し、ゆっくりと来た道を戻り始めた。
「今日はありがとうね。
久しぶりに綺麗な海を見られて、本当に楽しかったわ」
真理江はその若い背中に向かい、そっと呟いた。
振り向いた中瀬は、
「小林さん、本当はどこかに出かけたいんでじゃないんですか?
こんな大型連休に本屋の旅行ガイドのフロアになんていちゃ、やっぱ勿体無いですよ」
と、笑った。