ベイビーベイビーベイビー
 

 そうこうしている間にも日は沈み行き、次第に辺りは薄暗くなってきた。

 夕日を反射させていた海も、黒みを増していく。

 それでも恋人たちは同じように語らい続けているのであるが、

「そろそろ行きましょうか?
 冷えて来ましたしね」

と言うと、中瀬は再び真理江を先導し、ゆっくりと来た道を戻り始めた。


「今日はありがとうね。
 久しぶりに綺麗な海を見られて、本当に楽しかったわ」

 真理江はその若い背中に向かい、そっと呟いた。


 振り向いた中瀬は、

「小林さん、本当はどこかに出かけたいんでじゃないんですか?
 こんな大型連休に本屋の旅行ガイドのフロアになんていちゃ、やっぱ勿体無いですよ」

と、笑った。


< 277 / 475 >

この作品をシェア

pagetop