ベイビーベイビーベイビー
 
  
 真理江も同じように笑うと、

「本当ね。でも、なかなか無理を言えないものなのよ」

と言って、祥吾と連絡さえ取れないでいる今の状態を、諦めに似た感情で受け入れた様子であった。
 

「優しいんですね。
 そっか――大人ねぇ」

 とはいえ祥吾が既婚者であることなど、この中瀬に言えるはずもなく、真理江は

「中瀬君は? 彼女、いるんでしょ?」

といって、話の主人公を中瀬にすり替えようと試みた。

 すると中瀬は、

「大学の同級生で一昨年から付き合ってた子がいるんですけどね。
 先月別れちゃいました」

と、意外にもあっさりと身の上を話し始めた。


< 278 / 475 >

この作品をシェア

pagetop