ベイビーベイビーベイビー
 
 そうして、病室に残ったのは祥吾の両親と、突然倒れソファーに寝かされていた綾乃と綾乃の両親となった。

 綾乃はソファに身を預けながら、無表情で天井を見つめていた。

 綾乃には、悲しみや落胆とは別の次元においても、残念ながら今何をすべきなのかが、全くもって思い浮かばなかった。

 それは社会との交わりを絶ち、知る機会も学ぶ機会も持っていなかったからに他ならなかった。

 そんな様子の綾乃に、祥吾の両親もどうしていいのか全く分からなかったが、綾乃と綾乃の両親に改めて向き合うと、

「三浦さん、そして綾乃さん。
 祥吾が入院して以来、本当にお世話になりました」

と、医師に向かうのと同じくらい深々と頭を下げた。


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