ベイビーベイビーベイビー
 

 以前離婚を勧められたとき、ICUのベッドの上ではあったが、まだ祥吾は生きていた。

 しかし祥吾がいなくなったこれから、古澤の姓を名乗り、一人っ子であった祥吾の両親を支えて生きていく自信など、今の綾乃にあるはずも無かった。

 綾乃は祥吾の父親からの申し出に、今度は静かに頷いた。

 綾乃の両親もまた、祥吾の父親に対し、

「こんな至らん娘の事まで考えてもらって、本当に面目ないです。
 私らが我儘に育てちまったもんで、祥吾さんにもどれだけ迷惑を掛けたか……」

と、娘の離婚について、尤もだという姿勢を示した。

 自分の両親にも見放されているのを感じた綾乃は、冷めた目で両親の背中を見つめていた。
 

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