ベイビーベイビーベイビー
 

 自分が伊豆に帰るまでに数日がある。

 それまでにも小島と麻美は不毛なメール交換をするのだろうか?

 東京を訪ねている筈の麻美は、そこで小島と再会を果たすのであろうか?

 藤堂は無性に苛々してくるのを抑えながら、風呂から上がった。

 そして、

「麻美ちゃんが勿体無いよ!」

と小さく呟きながら、洗いたてのバスタオルで身体を拭いた。

 一人暮らしのアパートとは違う、そのタオルの柔らかさに妙に安心する。

 藤堂は結婚というものを、こういうことなのだと改めて思った。


 とはいえ、取引先の娘である麻美の縁談である。
 口を出していいものか迷いながら、藤堂は時田たちの待つ居酒屋へと向かうのだった。







~『ベイビーたちの夕暮れ』藤堂~


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