ベイビーベイビーベイビー
 

 突然の申し入れに綾乃は一瞬立ち止まったのであるが、振り向き、祥吾の両親をはじめとした祥吾の親類たちにきちんと向き合うと、

「いえ、私は――。
 祥吾も喜ばないような気がしますので」

 と、これまで見たことの無い程に毅然とした表情でそれに答えた。

 そして、

「最後までわがままを言って申し訳ありません」

 綾乃はそう謝ると、祥吾の両親に向かい深く頭を下げた。
 

 綾乃の意外なほど冷静な返答に、祥吾の両親は一寸戸惑う様子を見せたが、しかし綾乃の気持ちを汲めば尤もな事だと、すぐにそれを理解した。

 そして綾乃に負けぬほどに深く頭を下げて、その決意に応えた。



< 303 / 475 >

この作品をシェア

pagetop