ベイビーベイビーベイビー
 

 綾乃は祥吾の身体がとうとう煙となってしまう場所に同行する事をも辞退した。

 そう、この葬儀場から祥吾を乗せた霊柩車が発車するのを見送ることを、祥吾とのこの世の別れとして選んだ。


 それでも綾乃は祥吾の棺が友人らによって優しくそっと運ばれ、丁寧に車に乗せられるのを願い、静かに扉が閉められると安堵をした。




「祥吾―――
 未だに現実とは思えないよ、祥吾。

 祥吾―――
 こんな筈じゃなかったわよね?」



 今更に溢れる悔しい気持ち。
 悔恨の念に押しつぶされそうな綾乃は、許しを請うように両手を強く合わせ続けた。


 泣き叫ぶ友人たちと同じように、自分だって泣き叫びたい。
 気が狂いそうになるのをグッと抑えて――。







~『ベイビーたちのプライド』綾乃~

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