ベイビーベイビーベイビー

Pride2 真理江

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 同じ日の午後を少し回った頃。

 連休最終日にも関わらず、真理江はこの日も何やら身支度を整え、何処かへ出掛ける用意をしていた。


 これまでの真理江の様子をみれば、今夜の予定が急遽決まったものであることは容易に察しがつく。

 普通の若い女性らしく着る服を選んでいる真理江の顔を見れば、決してさり気なく施した化粧によるわけではない。見間違うことなく温かい血の巡る色、正に今を生き生きている人間らしい表情を取り戻していた。


 ほんの一週間前までの真理江は、祥吾がいなくなった世界というものを考えられずにいた。

 しかし現実は無情なもので、祥吾と離れた世界も、相変わらず真理江の周りで同じように回り続けた。


 手を伸ばせばいつだってそこにあった景色。

 真理江は今、それを素直に美しいと感じることができた。




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