ベイビーベイビーベイビー
今朝から東京の空を覆っていた分厚い雲は、昼になるととうとう雨を降らせ始めた。
それは肌寒さを感じるほどであったのであるが、しかし幸いな事にそれは長くは続かず、先程からその雲の固まりはほどけるように薄く薄くなり始めていた。
そして雲間からまだ薄暗い地上へと降りる日の光は神々しく、とても神秘的な風景を描いた。
「そうねぇ。やっぱり今日はこれにしようかな?」
そう言って真理江がクローゼットから取り出したのは、昨年買ったものの結局袖を通せなかった、白地に小さな花の刺繍が入ったワンピースであった。
それは真理江が選んだにしては少し珍しく、柔らかいシルエットをもつ愛らしいデザインのものであった。